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あとがき 本書は、私が主宰するインディペンデントのカルチャー・スクール〈BRAINZ〉の第一期講座の一環として行なった「批評家養成ギブス」という連続レクチャーを一冊に纏めたものである。書籍化にあたっては全十回の講義をほぼ丸ごと、話したままの形で採録し、加筆修正などは最小限に留めた。このレクチャーでは受講者に課題を出して実際に批評文を書いて貰ったのだが、そのテキストや書き手とのやりとりも収録してある。「ギブス」がどのような雰囲気だったのか、多少とも感じ取っていただけるのではないかと思う。 自分の最初の講座で「批評」をテーマにしようということは、〈BRAINZ〉を構想した時点から決めていた。詳しくは本文で長々と話しているが、私は近年、敢て「批評家」という肩書きを名乗るようにしている。それは多くの人々にとっては恐らく全くどうでもよいことだろうし、また私がやっていること、やってきたことが、この些か厳めしい呼称に値するのかどうかは、それぞれの他者の判断に委ねるしかないのだが、しかし自分としては、この「批評」という言葉ー概念に、実のところ、強いこだわりを持っている。 物書きのありようとしては、私はかなり特殊というか、分類しがたいタイプであると自認している。私がしてきたこと、していることの全容を知っているのは結局自分ひとりだけではないか、という気さえすることがある(それは多分ほんとうにそうだろう)。だが、私は私なりに、自分がひとりの書き手として(良くも悪くも)一貫していると思っており、その一貫性を名指すとするなら、それはやはり「批評」という言葉になるのではないかと思うのである。 この「ギブス」では、私が考える「批評」という営みの核心、私が信じる「批評家」の倫理というものを、可能な限り詳らかにしてみようと試みた。それはもしかしたら、一般的な考え方や世の趨勢からすると、相当に偏った、マイナーなものであるのかもしれないが、私はここで語られたことこそが「批評」と呼ばれ得る行為の芯であると確信している。この確信が無根拠でしかないものなのか、それとも僅かなりとも真理と云えるものにかかわっているのかは、これから新たに「受講者」となる読者の方々の審判を仰ぎたいと思う。 自分自身でも時々、妙に廻りくどい話し方をしていると感じることがあるし、寧ろ故意にそういう語り方を選んでいる節もないとは言えない。読んでいただけば分かるように、レクチャーの中では何度も同じモチーフがいつのまにか回帰している。しかし私はそのような、謂わばリアルタイムのお喋りならではの「冗長性」と「反復」を、事後的に圧縮・要約しようとすることは出来る限り避けたいと思った。その理由も本文の中でーーそれ自体冗長な語りによって!ーー語られているが、「批評」とは思考の運動であり、その運動性は文章に落とし込まれた後にも残っているべきだと私は考えており、それゆえ毎回、半ば即興的に思いつくがままに3時間一気に語り続けた講義のリアリティの方を、論旨のわかりやすさよりも優先した。容易に要約などできない何か、還元した時には何処かに消え去ってしまっている何か、それが「批評」なのだ、と私は思う。 従って、私は本書を、通常この種の本がそうであるように、読者が興味を持った章のどこから読み始めてもよい、というのではなく、最初から順番に、ゆっくりと読み進めてもらえることを希望する。そうすれば、私の喋りのリズムとともに、私の思考のリズムが次第に聴こえてくることだろう。そしてそのリズムの中から、「批評」とはいったい何なのか?、という根源的な問いかけに対する、ひとつの答え方が聴こえてくるならば幸いである。それは変拍子やポリリズムであるかもしれないが。 本書は〈BRAINZ叢書〉の第一冊目として刊行される。開講段階から第一期シリーズの全講義の単行本化を強く希望してくださり、各講義にも足繁く通っていただいた、メディア総合研究所の大久保潤氏に感謝する。氏の緻密で丁寧な作業なくしては、本書がこのような形を取ることは決してなかっただろう。また、〈BRAINZ〉という場所で出会った今回の受講者の何名かは、「ギブス」が修了してから若手批評ユニット、通称「アラザル」を結成した。彼(女)らの今後の活躍ぶりにも是非、ご注目いただければと思う。 尚、〈BRAINZ〉はその後も順調に開講しており、現在は第三期六講座が行なわれている。思えばこの小さな「私塾」だって、私にとっては「批評」という営み/試みのひとつなのだ。本書を手に取って、興味を抱いた方は、〈BRAINZ叢書〉の続刊や、〈BRAINZ〉の他の講座もチェックしてみて下さい。よろしくお願いします。 本書を今は亡き、ずっと前になくなった映画館、シネヴィヴァン六本木に捧げる。およそ二十年前のあの頃、私はおそらく、あそこで「批評」とは何かを学んだのだ。
by EX-PO
| 2008-12-17 23:50
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