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唐突ですが、こないだの「エクス・ポナイト」で僕と大谷君と戸塚君がやった謎の「ライヴ」について、何だアレ?的な感想を抱いた方も多かったのではないかと思うので、ちょっと解説しておこうと思います。 ええーと、やってみようと思ったのは、簡単にいうと「批評=パフォーマンス」みたいなことで、ネタはまあ何でもよかったんですが、ほぼ思いつきに近い偶然の導きによって、エリック・サティ、それも「アンビエント/ミニマル・ミュージックの開祖としてのサティ」ということになりました。 まず大谷君に、サティの「家具の音楽」の第一番「県知事の私室の壁紙」のループに、「ヴェクサシオン」と高橋悠治が弾く「ジムノペディ」を適当にミックスした30分のトラックを作ってもらいました。ライブの間中、このトラックは大谷君のラップトップ・コンピュータから基本的に流しっぱなしになっていました。 サティ自身が「家具の音楽」について述べた割と有名な発言があるのですが、元は同じ文章が、日本語の幾つかの文献では訳者が異なるために微妙に異なる言い回しになっています。そのサンプルを3つ用意して、大谷君と僕がそれぞれ朗読して、各々のラップトップに収めておきました(つまり同内容の異なる翻訳文が3×2=6つ)。更に、大谷君が秋山邦晴『サティ覚え書き』、僕が高橋悠治『音楽のおしえ』から、サティについての文章を断片的に抜き出し、別個に朗読して録音しました。あと僕はサティの年譜から、生まれてからの数年と、晩年から亡くなるまでの数年の部分を朗読して録音し、ラップトップに取り込みました。 これらをごくシンプルなルールに基づいて再生しつつ、リアルタイムでは、ジョン・ケージ『サイレンス』の中に「エリック・サティ」というテクストがあって、これは上段と下段で二つの文章が同時進行する仕掛けになっているのですが、上段から引用した幾つかのパッセージを僕が、下段の引用を大谷君が、コピーに振った番号に従って(但し同じ文章を何度か繰り返してもよい)生で朗読していました。 つまり、ループされるサティの音楽に、二人の録音された朗読が重なり、そこに生の朗読も加わっていたわけです。 そしてそこに途中から、大谷君と僕が任意に予め用意したサティとは殆ど無関係な音源から、さまざまなノイズ/サウンド/ミュージックが介入していました。 これらの音はすべて真ん中の戸塚君のミキサーに一旦入力されていて、戸塚君の操作を経てPAに送られていました。戸塚君は2台のミキサーを使っていて、そこでフィードバックを起こすと音声がかなりダメージを受けた状態でPAに送られることになります。 ざっとまあ、こんな形になっていました。ごく簡単な段取りの構成みたいなものは用意してあったのですが、決め決めでは無論なくて、基本的に即興、ランダムネスを重要視したやり方でした。 サティをめぐる幾つもの「言説=声」が縦横に織り重なって、何が語られているのか、ちゃんと聞き取ることが出来ない、中盤からは大量のノイズが紛れ込んできて、何が何だかわからない、ひどく混乱した状況になっていく、そういう狙いでした。 ちなみに当初は映像も使いたいと考えていて、サティに関する画像や動画なども用意して、僕と大谷君のラップトップからランダムに再生する一方、戸塚君は予め渡した素材とテクストから舞台上でデザインのフィニッシュを行なっていて、そのプロセスもバックスクリーンにリアルタイムで映し出して、ライヴの終了時には大谷×佐々木の共作による「エクス・ポ」の1ページ分の「批評」が完成している、というアイデアだったのですが、諸般の事情でそれは実現できず、こういう形になりました。しかもあまりにも事前に忙しくて準備がまったく追いつかず、大谷君のパートを録音したのは当日の昼間、戸塚君に至っては段取りを伝えたのがサウンドチェックの時初めてだったので、まあ予想通りというか何と言いますか、狙いとは別種のランダムさや即興性が現出する結果になったことは否定できません(笑)。 たとえば、途中で突然、僕と大谷君の生対談みたいになったのはシナリオ通りだったのですが(そこだけは互いにその場の考えで喋る段取りでした)、いざ本番になってみたら、これは当然予期すべきことだったのですが、あまりにも他の音がうるさ過ぎて、相手の言ってることが殆ど聞き取れない=会話にならない、というのはまったくもって失態でした。あのパートがあったので、最初は20分の予定を30分に延ばしたのですが、対話が成立しないのなら、20分の方がメリハリがあったのではないかと。いやはや。 ともあれ、ひとつ言っておきたいのは、声がよく聞こえない、何を言ってるのかわからない、というのは、基本的に故意の趣向なのであって、サティについてあれこれ延々語られているようなのだが、断片的にしか聞き取れない、ということがやってみたかったことだったのです。 僕がラップトップから出していたのは、サティの「パラード」や「本日休演」、高橋悠治が弾くサティの他の幾つかのピアノ曲、ブライアン・イーノの「ミュージック・フォー・エアポート」「ディスクリート・ミュージック」、デレク・ベイリーのソロ、ジョン・ケージの「日記」の録音、シャルルマーニュ・パレスタイン、ラ・モンテ・ヤング、ビューティオン、ゲルト・ヤン−プリンス、ジョン・ウィーズ、ラッセル・ハズウェル&フローリアン・ヘッカー、等々でした。「家具の音楽」が終わってライヴ終了の合図として再生したのは、高橋悠治演奏によるサティ「あなたが欲しい」です。 余興として思いついたことに無理やり付き合わせてしまい、大谷君と戸塚君には些か申し訳なく思うとともに、非常に感謝しています。 と言いつつも、こういうワケのわからない試みは、また別の形でやってみたいと考えています。 「批評」をパフォームする、ということには、最近ちょっと興味を持っていて、他にもアイデアがあったりするので。
by EX-PO
| 2008-05-04 19:33
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